社会人の英語勉強法

自己紹介

 

以前、 「Versant初めての受験の事前準備と直前対策」という記事を上げたところ反響がありましたので今回は英語の勉強法一般について纏めました。

私の英語スペックは次の通りです。

           

試験名 点数 受験時期 点数のTOEIC L&R換算
TOEIC L&R 925点 10年前925点
TOEFL 84点 4年前770点
Versant 63点 1年前930-960点
TOEIC Speaking 180点 半年前975点

※点数換算は、それぞの主催者団体の公式ホームページによる。

大学の学部生の頃の初受験760点から始まり、社会人数年目で925点まで上げて卒業したTOEIC L&R以外は、受験回数1回です。直近に受けたTOEIC Speakingが最も高得点でTOEIC L&R換算で975点でした。


英語と年収の関係

両者の関係は言うまでもないのですが、人材紹介会社のDODAが次の通り調査をしていました。TOEICの700点以上からTOEICの点数と年収に正の相関がみてとれます。

TOEICの点数と年収の関係(DODA調査 2013年)

出所:DODA TOEICスコア別平均年収(2013)


下記はより新しいNikkei StyleによるTOEICの点数と年収の調査結果です。500点未満と900点以上では、年収にして約200万円の開きがあります。


TOEICの点数と年収の関係(Nikkei Style調査 2023年1月)

出所:Nikkei Style TOEICスコア別平均年収(2023年1月)



英語の4技能の優先順位


言語学の研究者の間では統一見解なし

「リスニング」「スピーキング」「リーディング」「ライティング」のうち、「リスニング」と「リーディング」が受動的な技能、「スピーキング」と「ライティング」が能動的な技能と分類可能ですが、この4技能の優先順位については大学の先生の間でも見解が分かれております。(例えば、Research Gateにおける研究者の議論“Which skill is more important in language learning, the speaking skill or the writing skill?”

上記サイトの投票では

“It depends on the context in which the learner manifests his/her usage of language.(学習者の目的によって異なる)”

との見解が最も賛同を集めております。続いて、

“I would rate listening comprehension as the most valuable skill. Learners can begin hearing the language and processing it before using the other three skills.”

としてリスニングを最重要としたSamFord大学のJoanna Bradley先生の見解が賛同を集めております。日本語の英語学習に関するサイトでも、リスニングを筆頭とする意見は多いですが、3位以下は意見が割れます。


社会人にはリスニングとスピーキング

私見ですが、DeepL翻訳などのAIを使った翻訳ソフトの精度が非常に高まり、今後もAIが学習を続けることによって益々精度が高まることを考えると、社会人におけるリーディングとライティングの重要性は相対的に低下していると考えています。また、リスニングとスピーキングは即応が求められるので翻訳(通訳)ソフトを介する時間的猶予がありません。

加えて、上記の大学の先生の見解に近いですが、乳幼児が母国語を覚えて使う順序が、1.リスニング、2.スピーキング、3.リーディング、4.ライティングであることからも、社会人においてもこの順序の学習が効率的であると考えられます。

リスニングとスピーキングが受動的な技能と能動的な技能のセットで大きな括りで第一順位、リーディングとライティングも受動的な能力と能動的な能力の技能の対で、大きな括りで第二順位とすると、下記の表のように整理することができます。



私はTOEICが700点代だった大学(学部)の頃までは、リーディングが筆頭で以下3技能同列でしたが、社会人になってから、とくにTOEIC(L&R)換算の点数が大きく伸びているここ数年はまさに上の順序に従って学習をし、大きな手応えを感じております。

社会人の英語勉強法


ようやく本題です。社会人の皆様は本来の業務が大変お忙しく、勉強することも多く英語だけを勉強する時間がないことが多いと思います。

リスニングを重視し、英語のための英語の学習をしない

そこで、まずは本来の業務に係る学習を英語にて、とくにリスニングでインプットすることをお勧めいたします。ビジネスが国内の法律、税法等に係るものでない限り英語を通じて学習をすることは可能だと思います。とくに、元々海外からの輸入で日本でのビジネスが発展した金融やIT業界にお勤めの方は、この方法との相性がいいと思います。媒体は私はyoutubeを使っています。以前は有料の海外の音声コンテンツを使っていましたが、ここ数年youtubeでのコンテンツが非常に充実しましたので、有料コンテンツは解約しました。出社の場合は通勤中に、在宅勤務の場合は勤務の前後に家事等をしながら、聞くことができます。

以下は、参考までに私が登録しているyoutubeチャンネル(主にエンジニア界隈)です。


  • Dev Ed(エンジニア)
  • The Futer(デザイン)
  • Tech Lead(シニアエンジニアとビジネスの中間)
  • TensorFlow(文字通り)
  • freeCodeCamp(エンジニア)
  • Programming with Mosh(エンジニア)
  • mayuko(日系アメリカ人のエンジニア)
  • Traversy Media(エンジニア)
  • Clever Programmer(エンジニア)
  • Stanford University School of Engineering(文字通り)

ビジネスでは世界中の方とコミュニケーションをとる必要があるので、リスニングでは心地のいい英語(自分の場合はアメリカ人の英語)だけでなく、心地のよくない英語(自分の場合はイギリス人やインド人の英語)にもなるべく時間を割くようにします。また、音質の悪いyoutubeも、より実践的場面(電話)に近いなので、リスニング力強化の観点からは貴重です。


シャドーイングを通じたスピーキング


スピーキングでは、上記リスニングに合わせて、時々シャドーイングをしています。シャドーイングとは、耳から入ってきた英語を、同時にそのまま話すトレーニング法で、日本でも多くの方が推奨しています。聞き取った音の意味が分からない場合でも、いったんは聞こえたままを話します。知らない単語のこともありますが、知っている単語の音に慣れていないことが原因のことも多いです。

シャドーイングは、負荷が大きいので何かのついでにはできないのですが、リスニングとスピーキングを同時にトレーニングできます。もちろんスピーキングでは自分にとって心地のいい英語に特化すればいいと思います。またリスニングを軸にしつつ、シャドーイングを通じてスピーキングを鍛えることで発音がとてもよくなります。私のVersantのスコアでも発音で最も高い得点をとっています。また、私は半分以上英語の学習目的で、youtubeを時々英語で配信しています。

Facebookコミュニティーを通じたリーディングとライティング

ライティングは仕事のメール以外では、社会人はなかなか機会もなく時間もとれません。私はMediumに英語で投稿したことがあり、SSRNに英語の論文も投稿したこともあるのですが、それぞれ1回限りで継続的な学習にはなっておりません。本ブログも、他方で日本語の能力を下げないためにあえて日本語を選んで書いています。

そこで私は、英語のリーディングとライティング能力の維持向上にFacebookコミュニティーを活用しています。Facebookのコミュニティー機能は、海外ではよく利用されており、様々な分野のコミュニティーに無料で入れます(ただし、多くは管理者による承認を要する)。Facebookのコミュニティーで使われる英語は、ニュース英語ほど堅くない一方で、ビジネス目的のフリーランスの人も多いことから、口語ほど砕けることもなく、ビジネス英語に使いやすい表現が多いように思います。私は時間があるときはスマホで投稿に目を通して情報収集する他、時々投稿や返信をしています。

以下は、参考までに私が加入している海外の無料のコミュニティーです(最後の2つは、有料で参加したオンラインコースに伴うコミュニティー)。


  • ReactJS Expert Community
  • React.JS developers-2021
  • React.js Developers
  • ReaftJS, React Native, GraphQL, Relay
  • ReactJs for beginners
  • NodeJS developers
  • Profit with JavaScript(有料)
  • Learn Design and Go Freelance(有料)

その他、日本語での読書と同じように、海外で気になる本があれば米国Amazonから仕入れて読むこともあります(あるいはKindle)。私は最近だと、大ベストセラーで日本語にも翻訳されているAtomic Habbitsを読みました。

息抜きや趣味の領域での英語

英語を飛躍的に伸ばす上で最も重要なことは、息抜きに英語を取り入れることかもしれません。英語を勉強の対象とだけ捉えると、仕事や育児で疲れ果てているところで余力がなくなるので、一日のうちで英語に充てることができる時間が少なくなります。そこで息抜きを可能な限り英語化します。

例えば映画や洋楽が好きであれば、youtubeの他、netflix、spotifyなどでいつでも英語での息抜きが可能です。またyoutubeではゲーム実況も、スポーツ解説(ニュースでなくて自分がする方)もされているので、およそどんな趣味でも対応するチャンネルを見つけることができそうです。私はWeb開発も趣味化していますが、息抜きに洋楽を聞きます。息抜きですので自然に歌うことはあっても無理なシャドーイングはしません。息抜きや趣味の領域に英語を取り入れると、一日のうちの一人の時間がほぼ英語化しますので、英語の力は飛躍的に伸びます。

英語のための英語の勉強 -(1)ワーキングホリデー

本稿をご覧になっている方の中には、英語を通じた勉強をするほどの英語力がないが、フリーランス等で時間にゆとりのある方もいると思います。そのような方にお勧めしたいリスニングとスピーキングを起点とした英語学習の方法がワーキングホリデーです。通常の留学のビザでは留学先で就労することはできませんが、ワーキングホリデーのビザであれば語学留学しつつ働くことができます。また、単に現地の学校の顧客として留学するのとは異なり、現地で働く場合は強制的に生きた英語を使わざるを得ない環境に身を置きますので、ずっと英語が身に付きそうです。また、現地で働くことによって給与が得られますんので滞在費を抑えることができます。こちらのスマ留さんのワーキングホリデーの記事によれば、英語が第一言語でワーキングホリデービザを取得できる国は5つあります。また、スマ留さんの記事によれば、特におすすめなのは、うちオーストラリアだそうです。”オーストリアは他のワーキングホリデー協定国に比べ時給も高く、期間や滞在スタイルの選択肢も豊富なのでワーキングホリデー最適国”です。


国名言語年間募集人数年齢滞在可能期間
オーストラリア英語制限なし18歳以上30歳以下1年間(最大3年間)
ニュージーランド英語、マオリ語制限なし同上1年間(最大15ヶ月)
カナダ英語、フランス語6,500人同上1年間
イギリス英語1,500人同上2年間
アイルランド英語、アイルランド語800名同上1年間

なお、本章の作成で参考にしたスマ留さんの特徴は下記の通りです。記事・データを引用させて頂いたのでご紹介します。

  • サイトが読みやすい
  • 留学費用が競合他社と比較して安い
  • シンプルでわかりやすい料金体系。同一価格で語学学校が選べる

英語のための英語の勉強 -(2)おうち英語

本稿をご覧になっている方の中には、英語を通じた勉強をするほどの英語力がなく、かつ、フルタイムで働いているなどの事情でワーキングホリデーも難しい方もいらっしゃると思います。そこで本章では、日本人の幼児期の英語の勉強法(いわゆるおうち英語)を参考に、大人の英語勉強法について考察します。

おうち英語のコンセプト

「おうち英語」とは、日本人の子供が日本で英語圏のネイティブ同様の英語を身に着ける勉強法の総称で2020年頃から急速に広がりました。本稿でもご紹介した4技能の優先順位に厳格に従い、始めは単語も文法もわからない状態でリスニングを続け、スピーキングは自然に英語が出るまで待ちます。単語もわからない状態で英語を始めるので、音声だけでは学ぶことができず、映像とセット、すなわち動画で学ぶのが「おうち英語」の特徴です。

おうち英語で有名な有料教材

有料の教材では、ディズニー英語システム(DWE)とワールドワイドキッズの2つが有名です。いずれも非常によく作られており、基本的には幼児は聞き流すだけで自然と英語が出る教材になっています(飽きさせない工夫と、教材に日本語での解説はないので、聞きとれない場合の手助けなど親の支援は不可欠)。これらは幼児向けの教材ながら、ネイティブの英語に触れさせるというコンセプトなので、現地の幼稚園に相当するゆっくりと聞き取りやすい英語教育の他、現地の家庭での会話に相当するネイティブの通常の会話も併せて教材となってい点が特徴です。両者を組み合わせるリスニングの勉強法は、社会人のリスニングでも参考になるアプローチだと思います。

おうち英語でおすすめのyoutube4選

続いてyoutubeで見れる「おうち英語」で有名な教材を4つご紹介します。

Curious George

Eテレ(NHK教育テレビ)でおさるのジョージとして放送されているものの元の番組です。公式のyoutubeサイトです(チャンネル登録者数343万人、2023年1月)。Curious Georgeの特徴は、アメリカ英語ともイギリス英語とも言い切れないバランスのいい聞き取りやすい英語です(アメリカ東海岸)。他方で英語のスピードはこの4つの中では最も速く、社会人でも聞き取るのは難しいと思います。

Peppa pig

Curious Georgeよりも平易なゆっくりの聞き取りやすい英語で、この4つの中では一番人気があります(チャンネル登録者数2,980万人、同)。BBCTEDなどはとても聞き取れないという英語の苦手な社会人にもお勧めです。ただPeppa pigは完全なイギリス英語なので、アメリカ英語も含めてバランスよくリスニングを伸ばしたい人にはやや不向きです。

appMink

消防車、救急車、その他はたらく車、機関車、スポーツカーなどとくに男の子が好きな乗り物が主役のyoutubeです(登録者105万人、同)。各乗り物は可愛く擬人化されています。振り切ったアメリカ英語が特徴です。例えば、”Awesome”と連呼する場面など、活きた口語のアメリカ英語を聞くことができます。また、更新頻度も高く1週間に2度ほど新しい動画が投稿されます。スピードはそれなりに速いですが、発音がはっきりしているので、Curious Georgeより聞き取りやすいと思います。私なら4つのうちこれを見ます。

Number Blocks

幼児教育にあって、本稿でお勧めする英語を通じた学び(算数)を実現できるyoutubeチャンネルです(チャンネル登録者数570万人、同)。足し算、引き算、掛け算(九九)が学べます。1日に2回更新されることもあり、更新頻度が高いことが大きな特徴です。また、Curious Georgeの特徴は、アメリカ英語ともイギリス英語とも言い切れないバランスのいい聞き取りやすい英語です(アメリカ東海岸)。Number Blocksはyoutubeの中のblocksが知育玩具としても販売されており、日本でもAmazonで入手可能です。また、アルファベットを学ぶ、Alphablocksという兄弟チャンネルもあります。Number Blocksを卒業した子供は、Khan Academyという子供から大学生まで学べる数学のサイトに移ります(無料)。Khan Academyは純粋な数学の教材としても優れており、大学生や数学を学ぶ必要のある社会人にもお勧めです。私も大学院の院試の準備で、Khan Academyを利用しました。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。